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PSF最終期3部作他

PSFD紹介、某氏に頼まれたので、私感交えつつモダーンのサイトに書かれていたことなどを引用しつつ。昨日一回書いたら保存されないで消えてしまったので精神的に疲れました。

 

水晶の舟 / 星に願いを(PSFD-209) 2015年?

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モダーンのサイトでは「このアルバムは一般の音楽やロックファンには一切お勧め出来ないのだが、『歌』を探求している方にはぜひ聴いていただきたい。」などと書かれていた。ライブ録音なのですが実際、このなんというかぼやけたギターは一般のCDでは採用されないだろうなーという感じ。しかし、それまでの水晶の舟の作品の中では一番ボーカルが際立って心に染みる作品です。またギターデュオによるインプロビゼーションから切れ目なく歌につながっていく過程もまるで古い森の中にいるような不思議で自然体な美しさ。そこに立ち上がる歌は暖かさ、やさしさに満ちていて、ぼくは本当に救われる気持ちになる。この体験は、このアルバムでしか体験できませんが、毎年東京で行われる水晶の舟のワンマンで彼らの音楽は体験できるのでぜひ一度足を運んでいただきたいです。余談ですがぴらこさんと影男さんの運営する阿佐ヶ谷にある黒猫茶房もカレーも美味しく裏話も聞けてお勧めです。ぼくはよく遊びに行きます。今年(2019年)は10/25に吉祥寺シルバーエレファントで行われるようです。

http://www.suishounofune.jp/suishou.jp.kokuti.html

https://twitter.com/kuroneko_sabo

https://twitter.com/PirakoKurenai

 

近藤秀秋 / Asyl (PSFD-210)

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ギター、琵琶奏者にして一昨年に「音楽の原理」なる大書を執筆、EXIAS-J、Bishop records率いる近藤秀秋さんのセカンドソロ。PSFには珍しいですが近藤さんのCDは完全に楽譜を用いた作曲作品。帯文句「現代音楽、ジャズ、タンゴ、フラメンコ、琵琶楽、モダンコンポジション…ギター音楽を一点に統合する試み」5名のゲストを迎えた作品。フラメンコの些細なテクニックやクラシック、現代音楽の融和したギターが格好良い。個人的には4曲目のオーボエとのデュオが出色です。モダーンをして、「あの、高柳昌行を彷彿とさせる」とまで言わしめた巨人の界隈Bishopその他にも凄い演奏家がごろごろいる模様。ここでもう一枚紹介します。

近藤秀秋・望月治孝 / el edioma infinito (Bishop records)

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ここではバッハや近藤さんの作曲などの曲群が演奏されており、特に近藤さんのギターと望月さんのサックスの絡み、(一般のいわゆるサックスに比較したら、或いは音痴やミスと思われてしまうかもしれないが、ここではその深く、豊かな音色やキュルルルという裏返りまで含めて生々しく演奏されている)が素晴らしく、表面的でない真の芸術性を感じさせる美しさ。このアルバムで僕は初めてバッハで感動した。

https://twitter.com/Harutaka_M

 

川島誠 / Homo Sacre (PSFD-211)

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PSF最期のリリースにして生悦住さんの美学の結晶のような、Black editionからのLP化も他作に優先して行われている模様の傑作。サックスによるインプロビゼーション2曲収録。「川島誠のサックスには、日本的な間と、確かな歌心を感じる」モダーンサイトより。一曲目開始1分早々で突如ひっくり返るサックスの音は何度聞いてもゾクゾクする。楽譜やいわゆるテクニックの応酬とは対極に立つような、決して完璧ではない不完全な美しさが自己表現としての音楽やインプロの真の姿なのだと思わされる。しかしそれは地道な修行によってのみ獲得されるものなのだろう。2曲目の童謡、赤とんぼの演奏においても同じことがいえると思うが、こちらは勿論、楽譜通り弾いたものでは毛頭なく、時折流れるあのメロディが何とも深く心に刻まれる言葉では表現できない領域と言えようか、とにかく素晴らしい演奏です。

https://twitter.com/bokuwatakusan

川島誠・西沢直人Duo「浜千鳥」(Homo Sacre record)

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EXIAS-Jのドラマー、西沢直人さんとのデュオ。追悼ライブで灰野さんも歌った(https://youtu.be/0RoOYeKY7vU)、生悦住さんの愛した名曲「浜千鳥」を前項の赤とんぼのような形式(形式など勿論無いのだが)でのカバー。どうやったらこんなデュオができるのだろうというひしひしとしたパーカッションとサックスの共存・対話が、不思議なうたを情動的に昇華させる様が素晴らしく、感動的である。川島さん曰く「西沢さんが、川島さんのサックスを研究して合わせている」とのこと。前項の近藤さんと望月さんのデュオは完全に楽譜の意義や価値、必要性とを証明しきっているが、こちらでは打って変わって真逆の感想、楽譜なんて何の意味が必要性があるのだろうと思わされてしまう稀有なデュオ作品です。

 

 

PSFは東京アンダーグラウンドに君臨してはいましたが、もっとメジャーなところから見ればまだまだちっぽけなレーベルなのでしょう。これだけ見ても広い幅のいろんな音楽を出していますが実に多様な作品をリリースしていました。レビューを書くのはもう懲り懲りですがPSF周辺の海に飛び込むのは楽しかったですし、モダーンミュージックには、PSFに限らず日本や海外の幅広くコアな音楽が沢山ありました。モダーンのアンチコマーシャリズム精神が世間とのギャップを良くも悪くも作っている印象をぼくは持っていたけれど、ショップには一部のメジャーから出ている演歌や歌謡曲などのCDもあり、当たり前だけど生悦住さんはほんとに純粋に音楽がすきだったんだなぁと思い   閉店間際のサイトをチェックするのは愉しかったです。結局他所で買っちゃったりもしてたけど。現在東京の神保町にあるvasistas recordにモダーンの在庫があるかもしれないという噂を聞いたので元気になったらいってみようかなと思いました。https://twitter.com/vasistas_record