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untitled1(冷畳)

冷たい 畳  濡れた布団

私の鳥も虫も  死んだけど

 

庭の落ち葉を 布団に持ち込んで寝る

夜は 寂しいことなんて ひとつもない 

 

止まった時計 潰れた虫

話す相手は いないけど

 

引き出しの中から 想ってるのは

破れた紙のこと

燃えた花のお前のこと

机の下から 想ってるのは

枯れた草のこと

殺した虫のこと

咲かなかったお前の花

 

お花畑を 鞄に入れて歩く

夜は悲しいこと なんて ひとつもない

夕陽の空を壁に思い描く

夜は虚しいことなんてひとつもない

 

靴底の中から 想ってるのは

破け去ったお前のこと

 ゴミ箱の中から眺めてるのは

山のかげの太陽の

バスドラの中から眺めてるのは

死んだ虫の切れ端

 

 

 

 

untitled 2(足の指の間が俺の居場所なんだ)

押入れの中 

靴を濡らす音だけが 聞こえる

足の指の間が俺の居場所なんだ

 

 明日湖の見える所へ行きたい

 

足の指の中 靴を脱ぐ事

だけが許されている

 

明日  湖の見える所へ行きたい

足の指の間だけが俺の居場所なんだ

 

 

untitled 3(お前の丘)

お前の丘に登って

アスファルト

お前のお墓にしゃがみ込んで

 

お前のお墓に座って

お前の石に耳を当ててみる

あなたの声が私の骨に

石を伝って届いたら

いいのにな

 

untitled 4(墓)

山の麓にある川の

岸辺に黒いものがあって

それは死んだ虫の亡骸で

俺はそれを見ている

 

川辺には沢山のお墓があるが

それを偲ぶ人は居ないし

それは忘れられてゆくけど

 

私のお墓の上には

沢山の石はあるけど

 私の花はひとつもない 

私の草はひとつもない

 

川の流れの先の街に

潰れた生き物が落ちている

それは無くなってゆくけど

道端には沢山のお墓があるけど

それを偲ぶ人はいない

それを気に留める人は居るけど

 

昔のお墓の上には沢山の土があるけど

昔のお墓の上には沢山の花があるけど

私のお墓の上には沢山の土はあるけど

私の花はひとつもない

私の石はひとつもない

 

 

 

わたしのお墓のうえには

たくさんの土はあるけど  

わたしの花はひとつもない

わたしの草はひとつもない

 

untitled 5(青い虫)

夜の空は    青い虫

君のカゴから  出られない

朝の土は 濡れた音

草の根から 流れてる

昼の月は    屋根のしずく

月の涙 がこぼれてる

 

真っ白な       紙で   

私は  いつも ひとり   

 

空の夜は      赤い夕餉

道の星から  外れた

草の朝は       寒い帽子

 

月の昼は      赤い夕日

海の波から   消えてゆく

 

真っ黒な        部屋で

   私は     いつも 

ひとり だよ

 

 

untitled 6(私の丘)

私の丘に登って

アスファルト

私のお墓に 座り込んで

私の骨が あなたの星に

届いたら いいのに

 

 

untitled 7

歌詞なし

 

untitled 8(草の麩)

草の麩  わたしの書牘は

草露に捨てられてしまった

草の麩 私は右目で

房ささな海を見つめる

山の下から見つめてるのは

宇宙の空っぽの君の作り笑い

草の麩の香りと一緒に僕の事

忘れていればいいけど

 

草の麩 私は指先を

草露で湿らせてしまった

草の麩 私は右耳で

房ささな音を聞いてる

山の下から 聞いているのは

宇宙の 空っぽの 君の笑う声

房ささな海の草の麩と一緒に

僕の事 忘れてくれれば良かったのに